東京高等裁判所 昭和57年(く)229号 判決
記録を調査して検討すると、以下の事実が認められる。(1)弁護人らは、東京地方裁判所刑事二三部一係(裁判官伊藤正彦)に係属する被告人狭間嘉明に対する頭書被告事件の昭和五七年九月九日の第一回公判期日において、原審裁判官による傍聴人の所持品持ち込みに対する規制が不当であるとして異議の申立をなし、これが却下されるや、直ちに抗告の申立をし、再度の考案を求めたが、これが容れられないため、同裁判官に対し、不公平な裁判をする虞れがあるとして本件忌避の申立をするに至つた。(2)しかし、同裁判官は、右申立に対し、専ら訴訟遅延のみを目的とすることが明らかな場合に該当するとして、刑事訴訟法二四条により却下したため、弁護人らから本件即時抗告の申立がなされた。
これによつてみれば、弁護人らが忌避申立の理由とした、裁判所の法廷警察権の行使を含む審理の方法、態度などは、専ら訴訟手続内の問題であつて、これに不服がある場合には、右弁護人らが申し立てたとおり、異議、上訴等の方法によるべきであり、その不服を内容とする忌避申立が許されないことは明らかである(最高裁判所昭和四八年(し)第六六号・同年一〇月八日第一小法廷決定・刑集二七巻九号一四一五頁)。他に不公平な裁判をするおそれを認めることのできない本件においては、結局、その忌避申立が受け容れられる可能性は全くなく、それによつてもたらされる結果は訴訟遅延以外にはないから、原決定が、右のような忌避の申立は、訴訟を遅延させる目的のみでなされたことが明らかであるとして、刑事訴訟法二四条により却下したのは適法である。論旨は理由がない。